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       「FNサービス 問題解決おたすけマン」

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    ★第032号       ’00−02−18★

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     臨機応変

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●日本語版タイトル

 

「ターゲットは11人」(副題:モサド暗殺チームの記録)という小説が

あります。 私が持っているのは新潮文庫シ−13−1。 

 

原題は "Vengeance"、「報復」。 ミュンヘン・オリンピック(1972年)

で起きたテロ事件への、文字通り報復の物語。 1984年の作。

 

殺されたイスラエルの選手・役員が11人、だから同数のパレスチナ・

テロリスト幹部を選び、次々暗殺してゆくという、(翻訳者の解説では)

「当事者の体験に則して<内側>から、、具体的に語った」、「現代の

最も異常にして怪奇な人間的な」、「注目すべきドキュメント」です。

著者の「あとがき」だけでなく、「取材ノート」も付いているくらい。

 

 

前置きはともかく、その第9章に、こういう記述があります。

 

 「キブツであれ陸軍であれモサドであれ、たえず自力でものを考える

 習慣に重点がおかれる。 規則一点張りではなく、創意工夫がイスラ

 エルの伝統である。 常に考えてみよ、だ。 

 

 それはたとえば、命令を軽々しく無視したり、演習や実習を顧みない

 ということを意味しない。 ただし規則も演習もすべてではない。 

 

 理由があるからこそ規則が存在するのであり、演習も行なわれる。 

 その理由を見きわめよというわけである。  したがって、

 

 一枚の紙に書かれた規則と、規則の精神とのあいだに矛盾が生ずれば、

 精神のほうに立て。 機械ではなくて人間として行動せよ、、、」

 

即ち、臨機応変。 こりゃ往年の帝国陸軍とはだいぶ違いますなあ、、、

 

*   *

 

で、私の関心は、物語の筋よりも<彼らのやり方>に移ってしまった。

 

研修の実技演習中、講師も手の施しようが無いテーマにぶつかることは

希でないからです。 そんな時、私の心をよぎるのは「臨機応変で対処

していたら、こんな問題、起こさずに済んでいただろうに、、」の想い。

 

実際、技法よりタイミング良く始末する習慣の方が大切。 それは無し、

技法だけ、では<現実>に追い付けません。 一つの問題すら解決しない

うちに、次の問題が発生。 結局、アップアップすることに、、 だから、 

 

臨機応変。 それには、直接担当者への積極的な権限委譲を進め、、、

と常識は言う。 しかし<許認可制>文化の我が国、タテマエはともかく、

第一線の判断を尊重して任せる上司なんて、滅多にいやしません。

 

「ツマランこと考えずに、命令通りやれ!」  まるで帝国陸軍、、、

 

*   *   *

 

ろくに実情を知らない上位者が、大きな権限を揮う。 的外れの指示、

手遅れの対応。 それが、あの戦争でも、沢山の忠勇なる将兵を犬死に

させました。 その悲劇的歴史的事実が(せっかく)あるのに、、、

 

何故か教訓が身に着かず、第一線の働き手たちに「え、マジかよ?!」

と声を上げさせるような指示が、今もあちこちに降りかかる、、、

 

そんなのに従いたくはない、が、DNAがささやく。 ダメなヤツだと

思われるな、波風立てるな、、、 で、叱られないためにだけ行動して

しまう、、、 ああ、「人間を幸福にしない日本というシステム」! 

 

常々そう感じ、何とかならぬものかと考えているので、たとえ<小説>

の中の記述でも私は「うーむ!」と唸り、「こうでなくっちゃ!」と

色マークでよごす、、、 だから、読んだ後、もう古本屋にも出せない。

 

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●小学生刺殺事件の被疑者

 

を取り逃がし、自殺を許してしまった京都府警の失態を批判して、元最高

検察庁検事氏がワイド・ショーで、司会者の質問に答えていました。

 

 被疑者の説得に非常な長時間をかけたが、どうしても応じない。 即ち

 任意同行不能。 なら、その時点でアタマを切り替え、緊急逮捕すべき

 であった。 その現場判断が出来ないのは、日本警察の<体質>である。

 捜査本部の指示範囲で捜査活動を行なうことが「習い性とな」っている。

 しかし、予想外の事態が発生した場合には、現場判断に委ねる、という

 切り替えが必要。 「参考人」ではなく「被疑者」なのだから、もっと

 断固たる対応であっても良かった。  (臨機応変てことは無いんだ!)

 

 

 まず捜索令状を取り、次に任意同行を求める。 居宅を空にして、その

 令状で居宅を捜索する。 そこで最後的物証を発見し、それを(警察で

 事情聴取中の)被疑者に突き付け、自白を引き出して逮捕する、、

 

 のが普通の段取り。 今回もつい、その手順にこだわったのかも、、、

 

にしても、京都府警の行動ぶり、一々<ボタンの掛け違い>でしたな。

 

捜索令状は請求してあったが、午前7時被疑者居宅を訪れた時点では未だ

「無し」。 令状が出たのは8時30分なのに、現場の捜索開始は11時7分。

いったい2時間半、何をしていたというのかね?   それはともかく、

 

「犯人しか知り得ない事実」の証拠が居宅で発見され、捜査本部に報告され、

逮捕状請求へ。 それはしかし、何故か被疑者説得チームには知らされず、

やがて被疑者は「脱兎のごとく」逃走。 逮捕状が出たのは被疑者自殺の後。

 

*   *

 

もし最後的物証の発見が被疑者説得チームにも伝えられていたら、現場の

警戒も強まり、逃亡を防止できたかも、、情報交換不十分ゆえの残念無念。

 

第一線が「上」ばかり意識していて、現場で必要な横の連携がおろそかに?

 

 さすがに今は少なくなった、と思いたいが、日本企業海外拠点の日本人

 責任者が、いつも本社の鼻息ばかり窺っているのを嗤うジョークが沢山

 ありますが、、、それは国内でも同様。  不滅のタテ社会、ニッポン!

 

*   *   *

 

普通、任意同行を求めれば「素直に応じる」のが圧倒的だと言う。 が、

今回は事件自体、<普通>ではない。 だから犯人も、、 と身構えるか

と思いきや、ワキが甘かった、、、 油断以上に、想像力や準備の不足。

 

日本警察の検挙率は世界一(ホント?!)と言われたが、ここ数年、低落

著しく、その一方、犯罪発生率はウナギ上りの由。 しかも、これからの

犯罪は「これまでの」とはかなり異質。 対応には科学的知識と想像力が

必要だろうに、なお旧態依然、経験・カン・度胸、学歴と年功序列、、。

 

想像力以前、正義感も常識も不足、、、を証明した<不祥事>。 きっと

神奈川県警だけじゃあるまい、とは思っていたが案の定。 掌中の玉を

取り落とすほどナマっています、と自作自演でPRしたのだからお粗末。

 

我が想像力、とてもそこまでは届きませんでしたよ。

 

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●ところで前記「イスラエルの伝統」は、

 

ただのオハナシではなかった。 シナイ半島で大国エジプトと戦い、何度も

圧勝した不思議。 その秘密を探った米陸軍退役将軍のレポートがあります。

 

 

 たとえば、「あまり熱心になりすぎるな、強制に強制を重ねるな」という

 命令が出されるという。 それでも<軍隊>か、ダラケずに済むか? と

 普通は思う。 そこで、その反対だったらどうなるか、を考えてみる。 

 

 連隊長が大隊長に「9時出発、準備せよ」と命令する。 と、大隊長は

 余裕を見込み、中隊長に「8時目標で準備せよ」と命じる。 そのため、

 小隊長は7時に!と言われ、、、 で、兵隊は暗いうちから起こされる。

 

  (役員ご下問を恐れ、やたら大量の会議資料を準備させる上司、、!)

 

 そんな必要以上の努力で、みずから戦力の低下を招く愚を犯すことが無い

 よう、士官たる者、部下の状況を十分に把握していることが求められる。 

 

 そのようにしてイスラエル軍は、服装や規律など外観や形式にとらわれる

 よりも、<情報交換が盛んに行なわれる組織>になっている。

 

  (なるほど。 情報なしの臨機応変、なんてあり得ないからな、、)

 

 この自由なシステムは、<目標管理>的に運営される。 狙いはもちろん

 目標の達成。 だから小部隊のリーダーは、任務の遂行についてみずから

 決定を下し、突然の状況変化に絶えず備えるよう、徹底的に訓練される。

 

 強調されるのは、常に「指令より指導!」。 リーダーが成功するには、

 後から押すのではなく、先に立って引っぱること。 実践が求められる。

 

 決まりを守り、指示に従い、は大切だけれども、自分で考え、目標を達成

 することはもっと大切、、、 (実にアタリマエだよなあ、、、) と。

 

*   *

 

しかし、それを実行させてもらえるかどうかは、その組織の<体質>次第。

権限が末端にまで委譲されていなければ、第一線に臨機応変の行動を期待

することは出来ない、、、 は誰にも分かるが、「委譲した」と言っても

形式だけ、現場判断などまるで許されない、、、 てなことは少なくない。

 

結局は「上」の問題。 単に第一線メンバーの意志や努力でどうなるもの

でもない。 「失態」への京都府警のコメントに、<体質>がチラついた。

 

TV画面に出た「上」は平然、目標達成失敗については言及せず、「現場

はよくやった」とのみ。 受注の最終段階で大チョンボした営業チームを

「よくやった」と誉める営業部長、、、なんて、どこかにいますかね?  

 

まずかった、と正直に認めるのがカイゼンの出発点。 あれじゃ<良く

ない体質>が改まるどころか、<殻>が厚くなるばかり、、、でしょうな。

 

*   *   *

 

第一線を経験したことのある「上」なら、第一線が臨機応変に働ける条件

を整えてやるだろう。 我が国のシステムには、そこが欠けているのでは

あるまいか。 それすら認めない姿勢が、次の迷宮入りを生み出すはず。

 

イスラエル軍の士官養成制度は、<兵士経験>を<必修>としている由。

アタマだけの指示では、「勝つ」という目標は達成できない、、、と。

常に「小よく大を制し」てきた実績が、その効果を証明しております。

 

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あなたはすでに「第一線」の経験者。 「上」に立つ場面では、第一線の

臨機応変を許す人でなくては。 その時のため、率いるメンバーに<自分

で考える>ことを徹底的、共有的に訓練しておく必要があるでしょう。 

 

Rational Process は、それを可能とする手近で効果的な技法です。是非

ご研究なさいますよう。  

                           ■竹島元一■

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